コンサルの激務度・残業時間比較59社|公式開示データと口コミ集計値を分けて読む
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「コンサル 残業時間ランキング」として流通している表の多くは、会社が公式に開示した実績値と、口コミサイトの集計値と、固定残業の設定時間を、同じ列に並べています。この3つはまったく別の性質の数字なので、並べた時点で順位に意味がなくなります。本ページでは本ガイドの調査対象59社の働き方データを出所別に分け、公式に実績値を確認できる16社を独立した表として最初に置きました。そのうえで、なぜ残業時間という指標だけでは激務度を測れないのかを、固定残業・裁量労働制・案件特性という3つの構造から整理します。
この記事のポイント
- ✓本ガイドの調査対象59社のうち、残業時間・有給・育休のいずれかについて公式の実績値または公式の勤務条件を確認できた16社に加え、2026年9月にULSの公式求人の平均残業時間を追記しています
- ✓公式開示で最も短いのは三菱総合研究所の月13.8時間(単体・ESGデータブック・2025年度)、次いでMURCの月18.1時間(公式採用サイト・2024年度実績)。いずれもシンクタンク系です
- ✓KPMG FASの固定残業50時間とデロイト トーマツ(FA)の月33時間みなし残業は、給与設計上の数字であって実残業時間ではありません。この2つを比べても稼働の差はわかりません
- ✓激務さの正体は時間の長さだけではありません。FAS・再生系のディール期限は外部要因で動かせず、官公庁案件は年度末に集中し、製薬領域は上市スケジュールに縛られます。同じ月50時間でも負荷の質が違います
- ✓認定(プラチナえるぼし・くるみん・健康経営優良法人)は制度運用の客観的な裏づけになりますが、労働時間の短さを直接保証するものではありません。認定取得企業でも集計値が業界平均を上回る例があります
追記:ULSの公式求人で確認できる残業時間
2026年9月13日に確認したULSコンサルティングの公式求人は、全社平均残業25.24時間と説明しています。集計期間は明記されていません。従来の「45時間以内に管理」という方針と平均実績を分け、口コミ参考表から移しました。
以下の従来の59社比較は主に2026年8月時点の調査に基づきます。新規掲載企業の最新条件は各社の働き方記事も参照してください。
| 企業 | 求人に掲載された残業平均 | 確認条件 |
|---|---|---|
| ULSコンサルティング | 25.24時間 | 企業公式求人/対象期間の明記なし |
個人の残業上限ではありません。給与に含まれるみなし残業時間とも区別します。
コンサルの「残業時間」は3種類の別々の数字が混ざっている
コンサルティングファームの働き方を比較しようとすると、年収以上に厄介な問題に突き当たります。年収であれば上場企業には有価証券報告書での開示義務がありますが、平均残業時間には、上場・非上場を問わず開示義務がありません。有価証券報告書で開示が求められる人的資本の指標は、女性管理職比率・男性育児休業取得率・男女賃金差異の3つであり、残業時間はここに含まれないためです。
その結果、世の中に流通している「コンサルの残業時間」は、性質の異なる3種類の数字が区別されないまま並べられている状態になっています。当サイトでは、59社の働き方データを次の3つに分類しています。
本ページでは、公式開示の実績値と口コミ集計値を、意図的に別々の表に分けて掲載しています。混ぜた瞬間に「月13.8時間の会社と月100時間の会社」が同じ列に並び、比較として成立しなくなるためです。なお有給や年間休日は公式開示があり残業時間だけ集計値しかない、といった企業は両方の表に登場します。
| 分類 | 内容 | 確度 | 該当社数 |
|---|---|---|---|
| 公式開示の実績値 | 会社が公式サイト・採用サイト・ESGデータブック・有価証券報告書などで公表した平均残業時間・有給取得率・育児休業取得率・年間休日などの実績値 | 高い。出所と時点を特定でき、第三者が同じ数字を再現できる | 16社 |
| 制度上の数字 | 固定残業(みなし残業)の設定時間、所定労働時間、年間休日、有給の付与日数、フレックス/裁量労働制の適用区分。募集要項に記載される | 事実として正確。ただし「会社が想定する水準」であって実労働時間ではない | 多数(募集要項を公開している企業のほぼ全社) |
| 公開集計値 | 大手口コミサイトに投稿された回答の公開集計値。「月○○時間」という数字の大半はこれにあたる | 参考値。回答者の職位・部門・在籍時期・母数に強く左右される | 35社 |
2026年8月時点。当サイトが各社の公開情報をもとに分類したものです。1社が複数分類にまたがる場合があります(例:公式に年間休日を開示しつつ、残業時間は口コミ集計値しかない企業)。
なぜ公式開示が少ないのか
残業時間の開示が進まない理由は、単に「都合が悪いから」だけではありません。コンサルティングファームでは裁量労働制や専門業務型のみなし労働時間制が広く採用されており、そもそも「平均残業時間」という指標を全社共通で算出しづらい構造があります。裁量労働制の下では、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなすため、実在席時間の集計とは別の管理になります。
加えて、案件ごとの繁閑差が非常に大きいことも影響します。ディール案件の締切前後と案件間の谷では、同じ社員でも月の労働時間が数倍変わることがあります。単一の平均値を出しても実態を代表しないため、会社側が数値公表に慎重になるのは合理的でもあります。
だからこそ、あえて実績値を公開している企業の数字には価値があります。次章の16社は、当サイトが59社を調べた範囲で、働き方に関する実数を公式に確認できた企業です。
公式に実績値を開示している16社(この記事の核)
以下は、残業時間・有給取得・育児休業取得率・年間休日のいずれかについて、会社自身が公式に数値を開示している企業の一覧です。開示元と時点を必ず併記しています。掲載順は残業・労働時間に関する情報の具体性が高い順で、序列を示すものではありません。
一覧を見てまず気づくのは、残業時間そのものを実績値として公表している企業がきわめて少ないことです。2026年8月の調査対象59社のうち、平均残業時間の実績値を公式に確認できるのは三菱総合研究所・MURC・MSOL・ライズ・フューチャー・ノースサンド・メディヴァの7社にとどまります。残りは有給・育休・年間休日といった周辺指標が中心です。この事実自体が、この業界の情報環境を表しています。
| ファーム | 残業・労働時間 | 有給休暇 | 育児休業取得率 | 開示元・時点 |
|---|---|---|---|---|
| 三菱総合研究所 | 一人一月あたり平均時間外労働 13.8時間(単体)。年間250時間超は37名 | 取得率55.3%(単体)/グループ65.9% | ― | 三菱総研グループ ESGデータブック・2025年度 |
| 三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 平均残業時間 18.1時間/月。テレワーク利用率69.4% | 取得率68.1% | 男性46.7%/女性114.3% | 公式新卒採用サイト「多様な働き方」・2024年度実績 |
| ノースサンド | 平均残業時間 月約20時間(会社公表値) | ― | ― | 同社公式サイトの公表値 |
| マネジメントソリューションズ(MSOL) | 月平均残業22.9時間(固定残業は30時間分)。年間休日124日(2025年実績) | 入社日付与、初年度最大15日 | 男性85.2%/女性100.0%(復帰率96.8%) | 公式募集要項および有価証券報告書・2025年12月期 |
| メディヴァ | 月平均20〜30時間程度(固定残業20時間分を年俸に内包)。年間休日125日以上 | 5日以上の連休取得が可能とされる | 取得率・復帰率とも100%(男性の取得実績あり) | 公開求人票の記載 |
| ライズ・コンサルティング・グループ | 平均残業時間 月26時間(固定残業は職級に応じ45時間分) | 取得率75% | ― | 公式採用サイト「数字で見るライズ」・2026年2月末時点 |
| フューチャー | 平均残業時間 月28.0時間(会社公表値) | ― | ― | 会社公表値。口コミ集計では月41時間前後と開きがある |
| リッジラインズ | 新卒初任給にみなし残業35時間相当(85,100円)を明記。年間休日124日(2024年度実績) | 初年度から25日付与 | 男性73.3%(育児目的休暇を含む・2024年3月時点) | 公式D&Iページおよび2026年度新卒採用ページ |
| 日立コンサルティング | 年間所定休日125日(2024年度)。労働災害0件、ワークエンゲージメント75.0% | 平均取得日数13.0日(初年度から24日付与) | ― | 公式「働き方改革」ページの健康経営データ・2024年度実績 |
| リブ・コンサルティング | 固定残業手当の相当時間50時間(超過分別途支給)。年間休日125日(2026年度) | ― | 男性50%(女性管理職比率9.3%) | 公式新卒募集要項および有価証券報告書の法定開示 |
| グロービング | フルフレックス(コアタイムなし)、年間休日125日、勤務場所自由 | ― | 男性66.7%(女性管理職比率16.2%) | 有価証券報告書・2025年5月期および新卒採用ページ |
| 日本総合研究所 | 標準労働時間7時間30分(9:00〜17:30)。在宅勤務は日数上限なしと公式FAQに明記 | 毎年20日付与(1日/半日単位で取得可) | 女性105.3%/男性94.7% | 公式募集要項・公開求人票・キャリア採用FAQ |
| アビームコンサルティング | ― | ― | 女性100%/男性79.0%(男性の平均取得日数138日) | 公式採用ページ「数字で見る」・2025年度実績 |
| フロンティア・マネジメント | 9時〜18時のフレックスタイム制、在宅勤務は週2回まで | 取得率34.5%(2025年度/2024年度36.1%・2026年度目標70.0%) | 男性70.6%/女性100.0%(2025年度) | 有価証券報告書のサステナビリティ関連開示 |
| PwCアドバイザリー | 標準労働時間1日7時間。リモートワーク率72%(PwC Japanグループ) | 平均取得日数16.9日(年20日付与) | ― | PwC Japanグループの公表値および公式募集要項 |
| リヴァンプ | フレックスタイム制・リモート勤務・時短制度(所属チームと職位による) | 初年度13日付与(法定の10日を3日上回る) | 男性60%/女性の産休復帰率100% | 公式採用サイト「福利厚生・環境」ページ |
2026年8月時点。当サイトが各社の公式サイト・採用サイト・有価証券報告書・ESGデータブック・公開求人票で確認した開示値です。開示指標・集計期間・対象範囲(単体/グループ/提出会社)が各社で異なるため、この表の並び順は序列を意味しません。育児休業取得率が100%を超えるのは、前年度に出産した従業員が当年度に取得した場合など、分母と分子の対象期間がずれる算定方式によるものです。「―」は当サイトで公式開示を確認できなかった項目です。
残業実績を開示している7社の読み方
平均残業時間の実績値を公表している7社は、月13.8時間から月28.0時間の範囲に収まります。ただしこれは「開示している会社は残業が短い」という因果ではなく、「短いから開示できる」という選択バイアスがかかった集団だと考えるのが自然です。月70時間の実績を自ら公表する企業は、現実にはほとんど存在しません。
最も短い三菱総合研究所の月13.8時間(単体・2025年度)は、三菱総研グループのESGデータブックに掲載された数値で、年間時間外労働250時間超の社員数(37名)まで併記されている点が特徴です。平均値だけでなく分布の裾も開示している例は業界でも例外的です。同社ページでは、この数値と大手口コミサイトの体感値(月30〜40時間程度)の差を、裁量労働制の適用構造から説明しています。
MURCの月18.1時間も同様で、有給取得率68.1%・テレワーク利用率69.4%とセットで公式採用サイトに掲載されています。シンクタンク系2社が並んで上位に来るのは偶然ではなく、官公庁委託調査という比較的計画的に進む業務構成と、裁量労働制の下での時間管理が背景にあります。
一方MSOLの月22.9時間、ライズの月26時間、フューチャーの月28.0時間は、いずれも固定残業やみなし残業の設定時間より短い水準です。MSOLは固定残業30時間分に対して実績22.9時間、ライズは職級に応じた固定残業45時間分に対して実績26時間。会社が想定する枠を平均的には使い切っていない、という読み方ができます。
残業以外の指標で見える差
残業時間が非開示でも、有給や育休の実績値から働き方の一端は読めます。とくに対照的なのが、フロンティア・マネジメントとアビームコンサルティングです。
フロンティア・マネジメントは有価証券報告書で有給休暇取得率34.5%(2025年度)を開示しています。厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」による日本全体の年次有給休暇取得率65.3%を大きく下回る水準で、会社自身が2026年度目標を70.0%に置いていることからも、現状は休暇を取りにくい環境であることがうかがえます。自社に不利な数字を目標とセットで開示している点は、むしろ情報の信頼性を高めています。
アビームコンサルティングは、男性の産休・育休取得率79.0%に加えて平均取得日数138日(約4.5か月)まで公式に開示しています。取得率だけを公表する企業は多いものの、取得日数まで出している例は少なく、制度が形式でなく実際に使われていることを示すデータとして価値があります。リッジラインズの男性育休73.3%は「育児目的休暇」を含む取得率で、平均取得日数は非開示のため、同じ数字でも比較の精度が異なります。
各社の詳細な内訳や算定の注意点は、それぞれの個別ページの働き方記事に整理しています。数値の背景まで確認したい場合は、各社ページの「激務度・働き方」記事をあわせてご覧ください。
残業時間の数字が比較できない3つの理由
ここまで見てきたとおり、公式開示は限られています。では残りの企業について流通している「月○○時間」という数字を並べれば比較できるかというと、そうはなりません。理由は3つあります。この章は、他社の残業時間ランキングを読むときにも使える読み方の整理です。
固定残業時間・裁量労働制・集計母数。この3つを確認しないまま「月○○時間」という数字を並べても、比較にはなりません。数字を見たらまず「誰が、どう数えた数字か」を確認してください。
① 固定残業(みなし残業)の時間数は、実残業時間ではない
最も誤解が多いのがこれです。募集要項に書かれた固定残業時間は、給与設計上「何時間分までを年俸に前払いで含めるか」を示す数字であって、実際にその時間だけ働くという意味ではありません。にもかかわらず、この数字が「その会社の残業時間」として引用されることが頻繁に起こります。
典型例がBIG4系FASの2社です。KPMG FASは新卒の基本年俸600万円に固定残業50時間相当分を含み、デロイト トーマツのファイナンシャルアドバイザリー部門は新卒初年度基本年俸550万円に月33時間分の前払い残業を含む設計です。この17時間の差を「KPMG FASのほうが忙しい」と読むのは誤りです。両社とも平均残業時間は公式非開示であり、実際の稼働に差があることを示す公式データは存在しません。年俸の総額設計と、どこまでを前払いに織り込むかという方針の違いが表れているにすぎません。
同じことは他社にも当てはまります。リブ・コンサルティングの固定残業50時間、ライズの45時間、リッジラインズのみなし残業35時間、MSOLの30時間、メディヴァの20時間。これらを縦に並べると残業時間ランキングのように見えますが、実態はそうではありません。実績値が確認できるMSOL(実績22.9時間/固定30時間)とライズ(実績26時間/固定45時間)を見れば、固定残業時間と実績の関係が会社によってまったく違うことがわかります。
| ファーム | 固定残業・みなし残業の設定 | 実績値の開示 |
|---|---|---|
| KPMG FAS | 新卒の基本年俸600万円に50時間相当分を含む(超過分は別途支給) | 公式非開示 |
| リブ・コンサルティング | 固定残業手当の相当時間50時間(超過分は別途支給) | 公式非開示 |
| ライズ・コンサルティング・グループ | 職級に応じて45時間分の固定残業手当 | 会社公表で月26時間 |
| ドルビックスコンサルティング | 新卒初任給に月45時間分の固定時間外勤務手当を含む | 公式非開示 |
| リッジラインズ | 新卒初任給に35時間相当のみなし残業代85,100円 | 公式非開示(集計値は月35時間前後) |
| デロイト トーマツ(ファイナンシャルアドバイザリー) | 新卒初年度基本年俸550万円に月33時間分の前払い残業を含む | 公式非開示 |
| PwCアドバイザリー | 新卒の標準年収額に月30時間の時間外勤務手当を含む(超過分は別途支給) | 公式非開示 |
| マネジメントソリューションズ(MSOL) | 月給に含まれる固定残業代は30時間分 | 会社公表で月22.9時間 |
| メディヴァ | 年俸に月20時間分の固定残業代を含む(超過分は別途支給) | 求人票で月20〜30時間程度 |
各社の公式募集要項・採用ページの記載に基づきます(2026年8月時点)。固定残業時間はいずれも給与設計上の数値であり、実際の平均残業時間を示すものではありません。中途採用では職位・雇用条件により設定が異なる場合があります。
② 裁量労働制の下では、そもそも数え方が変わる
コンサルティング業界では、専門業務型裁量労働制や企画業務型裁量労働制の適用が一般的です。ベイカレントはアナリストが原則9〜18時の固定制、コンサルタント以上は専門業務型裁量労働制(みなし9時間/日)。日立コンサルティングはアナリストクラスがフレックス勤務制、コンサルタント〜マネージャークラスが裁量労働制(いずれも1日7.75時間)。MURCと三菱総合研究所は、経験を積むと裁量労働制へ移行する設計です。博報堂コンサルティングのように、裁量労働制で「残業手当なし」と公式採用ページに明記している例もあります。
裁量労働制は、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度です。したがって、この制度の下で算出される「平均残業時間」は、通常の時間管理下の数字と同じ意味を持ちません。MURCの月18.1時間や三菱総合研究所の月13.8時間という公式値と、口コミ集計に現れる月30〜40時間台という体感値の間に開きが生じるのは、この構造によるものと考えるのが自然です。当サイトの各社ページでも、どちらか一方を正解とせず、幅を持って理解することを推奨しています。
同じ会社の中でも職位によって制度が変わる点も重要です。若手のうちは時間が明確に管理され、昇進とともに裁量労働制へ移る設計が多いため、「入社直後の働き方」と「3年後の働き方」は前提そのものが違います。
③ 集計母数と回答者の偏りが数字を動かす
大手口コミサイトの公開集計値は、回答した人の平均にすぎません。回答者は転職を検討している層に偏りやすく、繁忙期の案件に当たっていた人が多ければ数字は上振れします。母数が小さいファームほど、この振れ幅は大きくなります。
アーサー・ディ・リトルはその典型です。公開集計値では月100時間前後(集計のスナップショットにより概ね95〜110時間)とされますが、回答者数は数十人規模にとどまります。同社は東京1拠点・コンサルタント240名超(2025年6月時点)の組織であり、この母数から得られる平均値を、数千人規模のファームの集計値と同列に扱うことはできません。ZSアソシエイツやアリックスパートナーズのように日本オフィスの規模が小さい企業も同様です。
さらに厄介なのが、「業界平均」の値すら集計によって異なることです。当サイトの各社記事では、同種の集計におけるコンサルティング・シンクタンク業界の平均が月39時間前後とされるケースと、月45時間前後とされるケースの両方を引用しています。基準となる平均が動く以上、「業界平均より上か下か」という評価も、どの集計を参照したかに依存します。
したがって、この記事の後半に掲載する集計値の表は、順位を読むためのものではありません。「どのレンジの帯にいるファームか」を大づかみに把握するための参考資料としてご覧ください。
公開集計値ベースの参考一覧
ここからは順位ではなく参考一覧です。以下に掲載する数値は、各社の公式開示ではなく、大手口コミサイトの公開集計値です。前章のとおり回答者の属性・母数に左右されるため、公式開示の表と同じ精度では扱えません。数値の大小そのものよりも、レンジの帯とカテゴリの傾向を掴むための表として使ってください。
| ファーム | 残業時間の目安(月) | 有給消化率の目安 | カテゴリ |
|---|---|---|---|
| アーサー・ディ・リトル | 約100時間前後(概ね95〜110時間) | 60%前後 | 戦略系 |
| マッキンゼー・アンド・カンパニー | 約77.4時間 | ― | 戦略系 |
| カーニー | 70〜80時間程度 | 80%台後半〜90%前後 | 戦略系 |
| ベイン・アンド・カンパニー | 70〜78時間の範囲(MBB3社共通の水準) | ― | 戦略系 |
| ローランド・ベルガー | 70時間前後 | ― | 戦略系 |
| 経営共創基盤 | 70時間前後 | ― | 事業再生系 |
| アリックスパートナーズ | 65時間程度 | ― | 事業再生系 |
| デロイト トーマツ(コンサルティング) | 65時間 | 50%程度 | 総合系(BIG4) |
| ボストン コンサルティング グループ | 約62.8時間 | ― | 戦略系 |
| リブ・コンサルティング | 50〜70時間台 | 50〜55%程度 | 独立系・新興 |
| デロイト トーマツ(ファイナンシャルアドバイザリー) | 45〜70時間程度(BIG4系FAS共通の目安) | ― | FAS |
| EYストラテジー・アンド・コンサルティング | 52時間 | 65%程度 | 総合系(BIG4) |
| 船井総合研究所 | 50〜60時間程度 | 6割程度 | 独立系・新興 |
| KPMGコンサルティング | 50時間 | 60%程度 | 総合系(BIG4) |
| Strategy&(PwCネットワーク) | 50時間程度 | ― | 戦略系 |
| PwCコンサルティング | 48時間 | 70%以上 | 総合系(BIG4) |
| ドリームインキュベータ | 45〜60時間台(繁忙期は80時間超の声も) | ― | 戦略系 |
| 山田コンサルティンググループ | 45〜50時間程度 | 4〜6割程度 | 独立系・新興 |
| フューチャー | 41時間前後(会社公表は28.0時間) | ― | IT・デジタル系 |
| フォーティエンスコンサルティング | 約40.8時間 | ― | 総合系 |
| シグマクシス | 40時間前後 | ― | 総合系 |
| マーサージャパン | 40時間前後(概ね37〜43時間) | ― | 組織・人事系 |
| 日立コンサルティング | 38〜44時間程度 | ―(公式:平均取得13.0日) | 総合系 |
| リッジラインズ | 35時間前後(概ね34〜38時間) | 50%台 | 総合系 |
| 野村総合研究所 | 30〜40時間台(繁忙部署では70時間程度の声も) | ― | シンクタンク系 |
| アビームコンサルティング | 30〜35時間程度 | 65〜70%程度 | 総合系 |
| Dirbato(ディルバート) | 30.6時間(繁忙期は80時間超も) | 65.9% | IT・デジタル系 |
| ノースサンド | 29.7時間(会社公表は約20時間) | ― | IT・デジタル系 |
| メディヴァ | 25時間前後(求人票は20〜30時間) | ― | 医療・ヘルスケア系 |
| アクセンチュア | 20〜30時間程度(多くのケースで月45時間以内) | ― | 総合系 |
| ベイカレント | 20時間程度 | ― | 総合系 |
| IQVIA | 部門により20〜40時間程度 | ― | 医療・ヘルスケア系 |
| ZSアソシエイツ | 20〜40時間程度(日本オフィスの母数は小さい) | ― | 業務・業界特化系 |
| キャップジェミニ | 20時間未満〜45〜60時間以上(案件差が非常に大きい) | ― | IT・デジタル系 |
いずれも公式開示値ではありません。大手口コミサイトの公開集計値をもとに当サイトが整理したものです(2026年8月時点)。回答母数・回答者の職位構成・在籍時期がファームごとに大きく異なるため、この表の並び順は序列を意味しません。ULSは2026年9月の公式求人確認により、この口コミ参考表から除外し、追記した独立の表に掲載しています。フューチャー・ノースサンドは会社公表値と集計値の両方が存在するため併記しています。上記に掲載のないファームは、当サイトで参照できる集計値が存在しないか、母数が小さすぎるため数値として扱っていません。
この表を読むときの3つの注意
- •上位と下位を直接比べないでください。表の最上位アーサー・ディ・リトル(月100時間前後)は回答者数十人規模の集計、最下位付近のアクセンチュア(月20〜30時間程度)は数千人規模の組織の集計です。統計としての性質がまったく違います。
- •同じ会社でも部門で倍以上違います。野村総合研究所はコンサル部門とITソリューション部門で負荷の性質が異なり、集計値は月30〜40時間台とされる一方、繁忙部署では月70時間程度という声もあります。日本総合研究所も同様に、IT部門はリリース・カットオーバー前後、コンサル部門は官公庁案件の年度末に負荷が寄ります。
- •会社公表値と集計値の差そのものが情報です。フューチャーは会社公表28.0時間に対し集計値41時間前後、ノースサンドは会社公表約20時間に対し集計値29.7時間。差の大きさは、集計対象の違い(全社か特定職種か)と、回答者の偏りの両方を反映していると考えられます。
カテゴリ別に見た稼働の傾向
個社の数字よりも実務的に役立つのが、カテゴリ単位の傾向です。本ガイドの調査対象59社を10カテゴリに分け、残業の目安レンジ、繁忙の型、公式開示の状況を整理しました。数値はいずれも前章までに掲載した公式開示値・集計値の範囲をまとめたものです。
| カテゴリ | 残業の目安(月) | 繁忙の型 | 公式開示の状況 |
|---|---|---|---|
| 戦略系 | 60〜100時間台(すべて集計値) | 案件単位の山谷が明確。プロジェクト終了後にまとまった休暇を取る運用が一般的 | 実績値の開示はほぼゼロ。アーサー・ディ・リトルが法定の行動計画で目標値のみ公表 |
| 総合系(BIG4・大手) | 20〜65時間(集計値) | 3月・6月・12月の決算期と案件フェーズ。同一社内でも部門差・案件差が最も大きい | 残業実績は各社非開示。アビーム・日立コンサル・リッジラインズが育休・健康経営・年間休日を公式開示 |
| IT・デジタル系 | 20〜45時間(集計値) | システムのリリース・カットオーバー前後に集中。リサーチ・アドバイザリー型は山谷が小さい | ノースサンド・フューチャーが会社公表値を持つ。リッジラインズはみなし残業時間を明記 |
| シンクタンク系 | 公式開示13.8〜18.1時間/集計値30〜40時間台 | 官公庁委託調査が国の会計年度に連動。1〜3月の報告書納品期と、年度前半の公募・提案期 | 業界で最も開示が進む。三菱総合研究所・MURCが実数を公表、日本総研は制度と認定を公開 |
| FAS・財務アドバイザリー系 | 45〜70時間程度(BIG4系FASの集計値) | ディールの締切に連動した鋭いピークと、案件間の谷。締切を自社で動かせない | 残業実績は各社非開示。固定残業・みなし残業の時間数と、PwC Japanグループの有給日数のみ公式 |
| 事業再生・ターンアラウンド系 | 45〜70時間前後(集計値) | 資金繰り・スポンサー選定など後戻りできない期限。常駐を伴うケースが多い | 非開示が中心。フロンティア・マネジメントが有価証券報告書で有給取得率・育休取得率を開示 |
| 組織・人事系 | 40時間前後(マーサージャパンの集計値) | 報酬サーベイのサイクル、決算期の退職給付債務算定、株主総会前後の役員報酬案件 | 4社とも残業実績は非開示。制度(フレックス・ハイブリッドワーク)のみ公式 |
| 医療・ヘルスケア系 | 20〜40時間程度(求人票・集計値) | 診療報酬改定期、製薬の上市スケジュール、医療機関の年度サイクル | メディヴァが公開求人票に残業時間・年間休日・育休取得率を明記。他3社は制度のみ |
| 独立系・新興 | 20〜70時間台(公表値と集計値が混在) | アサイン状況と稼働率に連動。急成長局面の企業は組織拡大に伴う負荷が加わる | 上場企業が多く、有価証券報告書の人的資本指標を確認できる。ライズが残業・有給の実績値を公表 |
| 業務・業界特化系 | 20〜60時間程度(集計値中心) | 常駐先の稼働カレンダー、クライアント側の事業スケジュールに引っ張られやすい | MSOLが残業・年間休日・育休の実績値を公表。他は少数精鋭で公式非開示が中心 |
カテゴリ分けは当サイトの分類によるもので、各社の自称や一般的な区分と一致しない場合があります。レンジは当サイトが確認した公式開示値・公開集計値の範囲であり、統計的な推計ではありません。
カテゴリ間の差は「働きぶり」ではなく事業モデルの差
この表から読み取れる最も重要なことは、カテゴリ間の稼働の差が、社員の頑張り方の差ではなく事業モデルの差だという点です。
戦略系が長時間になりやすいのは、短期間で経営レベルの意思決定に足る材料を作り切るという商品設計だからです。カーニーはマネージャー以下が原則1プロジェクト専任で、チームは3〜4人程度の少人数と公式に説明しており、少人数が短期に集中する構造がそのまま稼働に表れます。
逆にメディヴァの残業が月20〜30時間程度に収まるのは、医療機関に継続的に伴走する支援が中心で、極端な繁閑の波が生じにくいためです。同社ページでも、この差を「働きぶりの差ではなく事業モデルの違い」と整理しています。船井総合研究所の月次支援モデルも同様に、常駐型ファームとは稼働の質が異なります。
ガートナージャパンはさらに極端で、プロジェクト常駐型ではなくリサーチ・アドバイザリーが中心のため、プロジェクトの佳境で稼働が跳ね上がるという構造がそもそもありません。その代わり、継続的にリサーチ成果を出し続ける必要があるという別種の負荷が生じます。
激務さの正体は時間の長さだけではない
ここまで時間の話をしてきましたが、実際に働いた人が「きつい」と感じるかどうかは、月間の労働時間だけでは決まりません。同じ月50時間でも、負荷の質はまったく違います。当サイトが59社の働き方を整理する中で繰り返し現れた、負荷の質を左右する5つの要因を挙げます。
月間残業時間が同じでも、締切の性質・常駐の有無・繁忙の季節性・アサイン数が違えば、体感する負荷はまったく違います。数字を見たあとは、必ず「その時間がどう分布しているか」を確認してください。
① 締切を自社で動かせるか — FAS・事業再生系
FAS・事業再生系の負荷の本質は、締切が外部要因で決まることにあります。M&Aの入札スケジュール、契約締結日、開示のタイミング。これらは自社の都合で後ろ倒しにできません。デロイト トーマツのファイナンシャルアドバイザリー部門のページでは、この構造を「締切が自分たちで決められない」と表現し、結果として「平均すると激務ではないが、ピーク時は極端に忙しい」という形になると整理しています。
アリックスパートナーズはさらに緊急性が高く、負荷の源泉は時間の長さより「緊急性が高く後戻りできない」案件特性にあると同社ページでは説明しています。同社の案件の7割以上が成長加速・事業再編・抜本的改革といったテーマで、平準化された働き方にはなりにくい構造です。経営共創基盤の事業再生・ハンズオン案件も同様に、時間制約の厳しさが負荷を規定します。
この型の働き方は、月平均という指標と最も相性が悪いものです。平均値が月45時間でも、締切前の2週間に負荷が集中していれば体感はまったく違います。
② 常駐の有無 — 客先カレンダーに従うか
クライアント先常駐が前提のファームでは、自社の制度がそのまま適用されるとは限りません。MSOLはクライアント先常駐が中心で、フレックスタイム制でコアタイムなしという制度がありながら、実際の勤務時間は常駐先の就業時間に合わせて変動すると同社ページで説明されています。プロジェクトにより出張やリモートの可否が変動する点が、働き方の最大の変数だと整理されています。
アリックスパートナーズは原則としてプロジェクト期間中のクライアント先常駐を伴う働き方とされ、LASINVAも勤務地が本社もしくはクライアント先で、常駐案件では客先の運用に左右されるとしています。リヴァンプはクライアント先への常駐と経営実務の受託という業務構造上、支援先の稼働カレンダーに影響を受けやすい構造です。
求人票のフレックスやリモートの記載を見て働き方を判断する場合、常駐の有無は必ず確認すべき項目です。制度が存在することと、配属先で使えることは別の問題です。
③ 年度・季節のサイクル — 官公庁案件と決算期
官公庁の委託調査は国の会計年度に沿って動きます。MURCの政策研究事業本部は、公募・引き合いから企画提案・入札、調査・分析、報告書提出という流れで動くため、年度末(1〜3月)に報告書の取りまとめと納品が集中します。加えて年度初めから夏にかけては公募への企画提案・入札対応が重なり、受注できなければ売上にならない性質上、提案期の負荷は避けにくいとされています。三菱総合研究所、NTTデータ経営研究所、日本総合研究所のコンサル部門にも同じ構造があります。
有識者を集めた検討会・委員会の事務局運営という、分析業務とは別種の負荷が加わる点も官公庁案件の特徴です。開催日が確定すると動かせないため、そこに向けた作業の集中が生じます。
BIG4系では、3月・6月・12月といった決算期が繁忙のピークになります。PwCコンサルティングのページでは、官公庁案件が年度予算に紐づく独自の繁閑サイクルを持つことも指摘しています。船井総合研究所は決算期前後の12〜3月が繁忙期とされます。
④ 業界固有のスケジュール — 製薬の上市、医療の改定
業界特化型のファームでは、その業界のスケジュールがそのまま稼働のリズムになります。ZSアソシエイツは、上市スケジュールや年度計画に紐づく案件が多く、期限が動かしにくいテーマが中心だと同社ページで整理しています。新薬の上市日は規制当局の承認に連動するため、コンサルティング側の都合で動かせません。
医療・ヘルスケア系では診療報酬改定が同じ役割を果たします。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのページでは、残業時間の実績値は公式開示がないものの、診療報酬改定期などの繁忙は想定しておく必要があると整理しています。
IQVIAはさらに複雑で、コンサルティング部門は提案期やクライアント報告前に稼働が集中する山谷型、CRA・コントラクトMRは施設訪問・医療機関訪問を伴うフィールドベースの働き方と、同一社内で稼働のリズムが異なります。
⑤ アサインの形 — マルチアサインか専任か
見落とされやすいのが、同時に何案件を担当するかという設計です。三菱総合研究所のページでは、1案件に専任で入る戦略系ファームでは案件の谷でまとまった休みが取りやすいのに対し、複数案件を並行するマルチアサインでは常に何かが動いている状態になりがちだと整理しています。同社の有給取得率が55%台にとどまる背景の一つと説明されています。
対照的に、カーニーはマネージャー以下が原則1プロジェクト専任で、プロジェクト終了後に1〜2週間の長期休暇を取る運用が公式に紹介されています。有給消化率が公開集計値で80%台後半〜90%前後と高いのは、この専任+案件間休暇という設計と整合します。ベイン・アンド・カンパニーも案件終了後に一定の休暇を取得しやすく、メリハリをつけやすい環境とされています。
つまり「残業時間は長いが有給は取りやすい」戦略系と、「残業時間は短いが有給は取りにくい」シンクタンク系という、一見矛盾する組み合わせが成立します。どちらが自分に合うかは、時間の総量ではなく回復のリズムの好みで決まります。
働き方が改善している根拠と、その限界
「コンサル=深夜まで働く」というイメージは、実態と乖離しつつあります。それを裏づける材料は確かに存在します。ただし、その材料が何を保証していて何を保証していないのかを、正確に切り分けておく必要があります。
業界全体で働き方が改善していること自体は事実です。ただし「認定を取得している」「働き方改革を推進している」という記述は、その会社の労働時間が短いことを意味しません。認定・目標・実績・推移の4つを分けて読んでください。
改善の根拠① 個社の施策と、その結果として公表された数字
最も分かりやすい例がアクセンチュアの「Project PRIDE」です。同社ページによれば、この取り組みにより管理職未満の社員の平均残業は1日1時間未満に短縮され、離職率は約半分に低下したとされています。現在は多くのケースで月45時間以内、月20〜30時間程度という評価もあり、土日・祝日の出社はほとんどないとされています。
ベイカレントは長時間労働の削減を推進した結果、平均残業が月20時間程度まで改善したとされ、平均年収1,349万円という報酬水準と両立している点が同社の特徴として語られます。ローランド・ベルガーについても、数年前と比べ働き方は改善しているという声が公開集計値の中で複数見られる、と同社ページでは整理しています。
MSOLは健康経営宣言として「残業ゼロ」「喫煙率ゼロ」「健康診断の未受診ゼロ」の3ゼロを掲げ、採用時点で非喫煙者を応募資格に据えるなど方針を制度に落とし込んでいます。残業ゼロは現実の到達点ではなく目標としての宣言ですが、月平均22.9時間という実績値と併せて見ると、方針と実態が一定の整合を持っていることは確認できます。
改善の根拠② 第三者による認定の取得
自社公表値より客観性が高い材料として、第三者機関による認定があります。認定基準には労働時間や働き方に関する項目が含まれるため、取得の事実は制度運用の裏づけになります。本ガイドの調査対象59社のうち、認定を確認できた企業を整理すると次のようになります。
| 認定 | 確認できた企業 | 認定の内容 |
|---|---|---|
| プラチナえるぼし | 日立コンサルティング | 女性活躍推進法に基づくえるぼし認定のうち、より高い水準の取り組みを継続する企業への特例認定 |
| えるぼし(最高位・3段階目) | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2017年)、日本総合研究所(2016年度より)、MSOL(2023年8月)、リヴァンプ(2025年8月) | 採用・継続就業・労働時間等の働き方・管理職比率・多様なキャリアコースの5基準を広く満たす企業を厚生労働大臣が認定 |
| プラチナくるみん | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2024年)、日本総合研究所(2025年1月) | 次世代育成支援対策推進法に基づくくるみん認定企業のうち、より高い水準の取り組みを継続する企業への特例認定 |
| くるみん | 日立コンサルティング | 子育て支援の行動計画を策定・実施し、目標を達成した企業への認定 |
| 健康経営優良法人(ホワイト500含む) | ベイカレント(2021年以降連続でホワイト500)、野村総合研究所(2017年の初回認定から連続でホワイト500)、アビームコンサルティング(2018年・2021年など複数回ホワイト500)、日本総合研究所(2019年から連続)、日立コンサルティング(2026年3月認定)、MSOL(大規模法人部門) | 経済産業省と日本健康会議が優良な健康経営を実践する法人を認定。ホワイト500は大規模法人部門の上位区分 |
各社の公式サイト・採用サイトに記載された認定取得状況を当サイトが整理したものです(2026年8月時点)。この表に記載のない企業が認定を取得していないことを意味するものではありません。
限界① 認定は労働時間の短さを保証しない
ここが最も重要な留保です。認定制度の評価基準は多面的で、労働時間はその一項目にすぎません。したがって認定の取得は「労働時間が短い」ことの証明にはなりません。
具体例を挙げます。日立コンサルティングはプラチナえるぼし認定・くるみん認定・健康経営優良法人2026をすべて取得している企業ですが、大手口コミサイトの公開集計値による平均残業時間は月38〜44時間程度で、同じ集計での業界平均(月39時間前後)と同水準からやや上に位置します。認定と労働時間は別の軸だということが、この一例からも分かります。
同様に、同社は年次有給休暇を初年度から24日付与していますが、2024年度の平均取得日数は13.0日で、付与日数に対する取得率でみると5割強です。3年間の推移も13.4日・13.7日・13.0日と横ばいで、大きく改善も悪化もしていません。制度を手厚くしても取得実績がそれに追随するとは限らない、という率直な事実がここに表れています。
リッジラインズにも同じ構図があります。年次有給休暇は初年度から25日付与と業界でも手厚い水準ですが、公開集計値では有給取得率が50%台という値が示されています。付与日数が多いほど取得率という比率は低く出やすいという構造的な要因はあるものの、消化しきれていない実態を示唆する可能性も否定できません。
限界② 目標値は実績値ではない
改善の意思表明と、改善の実現も区別する必要があります。アーサー・ディ・リトルは、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画(2025年10月〜2028年9月)で、各月ごとの時間外労働および休日労働の合計時間数を30時間未満(25〜39歳のフルタイム労働者は45時間未満)とする目標を公表しています。これは同社の労働時間について確認できる数少ない一次情報です。
一方で同社は、目標達成に向けた取組内容として2027年1月からの時間外労働の理由把握と圧縮に向けた課題整理・施策検討、2027年4月からの制度導入と全社員への周知を予定していると記載しています。裏を返せば、2026年8月時点では本格的な施策が始まっていない段階とも読めます。公開集計値の月100時間前後という数字と目標値の月30時間未満の間には大きな開きがあり、この差が今後どう埋まるかは現時点では未確定です。
フロンティア・マネジメントの有給休暇取得率も同じ構造です。2026年度目標は70.0%ですが、2025年度実績は34.5%で前年度の36.1%からわずかに低下しています。目標を掲げていること自体は改善意思の表明ですが、実績が伴うかどうかは別の問題です。
限界③ 「改善した」の基準時点が示されないことが多い
「働き方改革により改善しました」という説明は、比較対象となる過去の時点が明示されないまま使われがちです。何年前と比べてどれだけ改善したのかが示されなければ、現在の水準そのものは評価できません。
この点で参考になるのが、複数年の推移を開示している企業です。三菱総合研究所は一人一月あたり平均時間外労働を2023年度17.3時間、2024年度13.8時間、2025年度13.8時間と3年分公表し、年間時間外労働250時間超の人数も70名・28名・37名と併記しています。直近では改善が頭打ちになり、250時間超の人数はむしろ増えていることまで読み取れます。単年の数値だけでなく推移を見ることの重要性を示す例です。
MSOLの男性育児休業取得率も、2023年10月期15.4%、2024年12月期46.8%、2025年12月期85.2%という推移が開示されているため、改善が本物であることを確認できます。単年の数値だけでは、それが継続的な水準なのか一時的なものなのか判断できません。
実務的な確認手順|数字を自分の配属先に翻訳する
最後に、ここまでの整理を実際の意思決定に落とし込む手順をまとめます。全社平均は出発点にすぎず、そこから「自分が入る部門・案件でどうなるか」へ翻訳する作業が必要です。
11. まず数字の出所を確認する
検討中のファームの数字が、公式開示の実績値か、固定残業などの制度上の数字か、口コミ集計値かを確認します。公式開示の実績値であれば、集計期間・対象範囲(単体かグループか、全社か特定職種か)・時点まで見ます。集計値であれば、母数の大小を意識してください。母数が数十人規模の集計は、順位を読み込むべきデータではありません。
22. 固定残業時間と実績値を混同しない
提示された年俸に何時間分の固定残業代が含まれるか、超過分が別途支給されるかを確認します。これは報酬条件の確認であって、労働時間の見積もりではありません。実際の稼働は別途、配属予定部門に確認する必要があります。同じ固定残業50時間でも、実績が月26時間の会社と月70時間の会社があり得ます。
33. 自分に適用される勤務制度を特定する
裁量労働制の適用が入社時点からか、経験を積んでからかを確認します。ベイカレントのようにアナリストは固定制でコンサルタント以上が裁量労働制という設計や、三菱総合研究所・MURCのように経験を積むと裁量労働制へ移行する設計があります。適用後の時間管理と手当の扱い(深夜残業手当の有無など)もあわせて確認してください。
44. 配属予定部門の繁忙の型を聞く
月あたり何時間かではなく、1年のどこに山が来るかを聞きます。官公庁案件なら国の年度末と公募・提案期、BIG4系なら3月・6月・12月、FAS系ならディールの締切、医療領域なら診療報酬改定期や上市スケジュール。山の位置が分かれば、自分の生活サイクルと合うかを判断できます。
55. 常駐・出張・アサイン数を確認する
クライアント先常駐があるかどうかで、自社の勤務制度が実際に使えるかが変わります。あわせて、同時に担当することになるプロジェクト数の目安も聞いてください。専任型かマルチアサイン型かで、休暇の取りやすさが大きく変わります。全国・海外に拠点を持つファームでは出張の頻度も確認対象です。
66. 有給の「付与日数」ではなく「取得実績」を聞く
付与日数の多さは制度の手厚さを示しますが、取得実績とは別です。初年度25日付与でも取得率が50%台という例があります。可能であれば、直近1年で配属予定チームのメンバーが実際に何日取得したか、案件の谷でまとめて取る運用があるかを聞いてください。
各社の詳細は個別ページへ
本ページは59社を横断して構造を整理したものです。個別の企業について、勤務制度の詳細、繁忙期の具体的な構造、休暇制度の一覧、公式データの原文に近い記載を確認したい場合は、各社ページの「激務度・働き方」記事をご覧ください。公式開示の有無、非開示である項目、当サイトが確認できなかった範囲まで、企業ごとに明記しています。
また、稼働時間と報酬をセットで検討する場合は、年収ランキングの記事も参考になります。額面が同じでも労働時間が違えば時間あたりの報酬は変わり、逆に労働時間が同じでも報酬水準は大きく異なるためです。
よくある質問
- Q. コンサル業界で最も残業が短いファームはどこですか?
- A. 公式開示の実績値で確認できる範囲では、三菱総合研究所の一人一月あたり平均時間外労働13.8時間(単体・ESGデータブック・2025年度)が最も短く、次いで三菱UFJリサーチ&コンサルティングの月18.1時間(公式採用サイト・2024年度実績)です。ただし両社とも裁量労働制の適用者が多く、大手口コミサイトの公開集計値では月30〜40時間程度という体感値も示されます。また、そもそも2026年8月の調査では実績値を確認できた企業は59社中7社(9月にULSを追記)にとどまり、公表していない企業との比較はできません。「開示している会社が短い」のではなく「短いから開示できる」という選択バイアスがある点にも留意が必要です。
- Q. 固定残業50時間と書いてある会社は、毎月50時間残業するということですか?
- A. 違います。固定残業(みなし残業)の時間数は、給与設計上「何時間分までを年俸に前払いで含めるか」を示す数字であり、実際の労働時間ではありません。実績値が確認できる例を見ると、MSOLは固定残業30時間分に対して月平均残業22.9時間、ライズ・コンサルティング・グループは職級に応じた固定残業45時間分に対して会社公表の平均残業は月26時間です。いずれも設定時間を平均的には使い切っていません。逆に、設定時間を超える月には超過分が別途支給される設計が一般的です。固定残業時間は報酬条件の確認項目であって、労働時間の見積もりには使えません。
- Q. KPMG FASの固定残業50時間とデロイト トーマツFAの33時間は、忙しさの差を表していますか?
- A. 表していません。KPMG FASは新卒の基本年俸600万円に固定残業50時間相当分を含み、デロイト トーマツのファイナンシャルアドバイザリー部門は新卒初年度基本年俸550万円に月33時間分の前払い残業を含む設計です。しかし両社とも平均残業時間は公式非開示であり、実際の稼働に差があることを示す公式データは存在しません。この17時間の差は、年俸の総額設計とどこまでを前払いに織り込むかという方針の違いを表しているにすぎません。BIG4系FASの残業時間は公開集計値で月45〜70時間程度とされることが多く、部門・職位・案件フェーズによる差のほうが会社間の差より大きいのが実情です。
- Q. 戦略ファームはやはり激務なのですか?
- A. 労働時間の総量で見れば、大手口コミサイトの公開集計値では戦略系が月60〜100時間台と最も長い帯に位置します。マッキンゼー約77.4時間、BCG約62.8時間、カーニー月70〜80時間程度、ローランド・ベルガー月70時間前後といった数字が示されています。ただしこれらはすべて公式開示ではない参考値です。一方で戦略系には、1プロジェクト専任が原則で案件終了後にまとまった休暇を取る運用が定着している企業が多く、カーニーの有給消化率は公開集計値で80%台後半〜90%前後とされます。「残業時間は長いが有給は取りやすい」という組み合わせであり、残業時間の短いシンクタンク系がマルチアサインのために有給を取りにくいのと対照的です。時間の総量だけでなく、回復のリズムを含めて比較することをおすすめします。
- Q. 認定(プラチナえるぼし・くるみん・健康経営優良法人)を取っている会社は残業が少ないですか?
- A. 必ずしもそうではありません。これらの認定は採用・継続就業・管理職比率・子育て支援・健康施策など多面的な基準で評価されるもので、労働時間はその一項目にすぎません。たとえば日立コンサルティングはプラチナえるぼし認定・くるみん認定・健康経営優良法人2026をすべて取得していますが、公開集計値による平均残業時間は月38〜44時間程度で、同じ集計での業界平均(月39時間前後)と同水準からやや上に位置します。認定は制度運用の客観的な裏づけとして価値がありますが、労働時間の短さを直接保証するものではありません。認定・目標・実績・推移の4つを分けて読むことをおすすめします。
- Q. 同じファームでも部門によって残業時間は違いますか?
- A. 大きく違います。野村総合研究所はコンサル部門が提案・納期前に繁忙となり、ITソリューション部門はリリース・夜間休日対応と負荷の性質が異なります。公開集計値は月30〜40時間台とされますが、繁忙部署では月70時間程度という声もあります。日本総合研究所も、IT部門はリリース・カットオーバー前後に負荷が集中し、システム運用領域には24時間365日の体制がある一方、コンサル部門は官公庁案件の年度末・提案期に繁忙が寄ります。IQVIAはコンサルティング部門が山谷型、CRA・コントラクトMRはフィールドベースと、稼働のリズムそのものが異なります。全社平均は参考程度にとどめ、配属予定部門の実態を選考過程で確認することが不可欠です。
SUPERVISED BY — 監修者
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監修者
辰本 明日加Asuka Tatsumoto
STRAND PARTNERS 代表取締役
慶應義塾大学卒業後、アクセンチュア戦略部門、リクルートを経てSTRAND PARTNERSを創業。コンサルファーム・PEファンド・大手事業会社への転職支援を手がける。

監修者
高辻 渚Nagisa Takatsuji
STRAND PARTNERS
米国ビジネススクール卒業後、PwCニューヨークオフィス、アクセンチュア戦略部門を経て参画。グローバル視点でのコンサル・外資系企業への転職支援を担当。
本記事はストランドパートナーズ株式会社のコンサルティング業界担当コンサルタントが内容を確認しています。
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本ページは各社の公開情報をもとにコンサルペディア運営事務局が独自に編集したものであり、掲載企業による監修・提供を受けたものではありません。年収・残業時間・選考に関する情報は有価証券報告書等の法定開示のほか、公開求人情報や口コミサイトの集計値をもとにした目安を含みます。実際の条件を保証するものではありません。内容の訂正が必要な場合はお問い合わせください。